竹富島は、今日も平和に過ぎてゆく

石垣港離島ターミナルからフェリーで10分。竹富島に到着。こんなきれいな沖縄の海にもハブクラゲが生息する。このクラゲはハブの数倍の毒を持つから注意が必要だ。刺されてからすぐに手当てを受けられなければ、ヘリで病院まで飛んでもらうしかないだろう。

 

船着場には、宿などのワンボックスカーが送迎に来ている。宿までは、すぐなのでのんびりと歩いた。

 

今回は2回目なのでだいたい要領を得ていた。竹富島は、1日あれば見て回れるほどの大きさだ。それでいて集落には赤い琉球赤瓦(りゅうきゅうあか がわら)の民家がかわいらしく建ち並んでいる。サンゴ砂の敷きつめられた道は、島民が毎日、朝からホウキできれいに波もように清掃してくれている。島の時間に合わせるかのように、今日も観光用の人荷車をつけ、牛足を持ち上げた水牛が止まっているかのように見える。

 

民宿の入り口には赤紫色のブーゲンビリアがアーチをかけて出迎えてくれる。やはり、ここも赤い屋根瓦の家だ。沖縄の身内におじーやおばーがいなくてもここに来れば沖縄のいなかに帰ってきたようにくつろげる。

 

座敷にて地元沖縄料理のおもてなしの後、おじーは沖縄について語ってくれる。

 

「もずくが好きなら5月に来なさい。ここの海では取り放題だから」

 

と、誘ってくれた。

 

蝶

 

夜のとばりが降りるころ、星は落ちてくるかように大きく輝きだす。昼の暑さをしのいだ八重山オオコウモリが餌を求めて巣を飛び立つ。そして、どこからか三線の音色と島唄が聴こえてくる。

 

心底、沖縄にひたりたい、そんな期待通りに満喫させてくれる島が竹富島だ。

 

離れの部屋に布団を敷いた。畳の匂いが夜の安眠を誘ってくれそうだ。客室どうしは壁づたいにつながっている。灯りをおとしてからも隣の部屋から話し声が聞こえてきた。

 

小さい女の子の声だった。特に聞くつもりはないのだけれど、自然に耳に入ってきた。言葉は大阪弁のようだ。誰かに向かっておしゃべりしてるみたいだ。止まり方を忘れたゼンマイ仕掛けのおもちゃのように、いつまでも続く。話がとまらない。

 

「おっちゃんがなっ。電車で隣りの席にすわってなっ。・・・おっちゃがなっ。・・・」

 

と、やたら「おっちゃん」を連発する。偏見にも大阪の女の子は、小さいころから「おばちゃん」なんだと思ってしまった。

 

「さっさと、寝ろ!」

 

お父さんらしき人がとうとうしびれをきらした。
そして、静寂が訪れる。

 

次の日、朝食の茶の間のちゃぶ台についた。昨夜の声の主が家族とともに起きてきた。「おっちゃん」と、発するには似つかいない小さなかわいい女の子であった。