真夜中のドライブ

草木も黙る丑(うし)三つ時。いつもなら寝ている。闇が深くなった時間帯。

 

久喜のドック・グッズ・ショップ 「大地」の主人が軽ワゴンに乗って、ぼくのアパートにやって来たのが、カーテン越しに見えた。夜も静まっているので、エンジン音が耳に入ってくる。

 

もう3回は行っただろう。山形や新潟でおこなわれる「犬の競技大会」に合わせて会場販売をするのだ。8時過ぎには開会するので、その前に到着し、商品をちん列する。だから、深夜の出発になる。

 

「つき合ってくれよ。1人で運転すると眠いんだ。」

 

と、大地の主人はいった。元トラック運転手をしていた彼でも1人で往復700~800kmの移動はしんどいらしい。途中に睡魔におそわれたら危ない。なので、ぼくは友達として同乗する。大地の主人につれられて東北、上越へ向かうのだ。

 

大地の主人はひたすら目的地へと車をとばす。前方を照らすサーチライトの視界を追いかけるように突き進んだ。

 

会話は、当時、ラジオから流れるラグビーワールドカップの日本代表の善戦に盛り上がったり、お互いに眠気をもよおして無口になったりした。

 

夜も明けたころ、リアガラスに濃いスモークが貼られているクラウンの後につけた。制限速度を超えない。スピードは一定。

 

「覆面パ〇カーだよな」

 

「試しにぬいて見れば」

 

と、冗談まじりにぼくは言った。

 

「そんな度胸はない」

 

クラウンを尾行するかのようにくっついて走った。

 

しばらくは、そのままだ。

 

県境付近で前方の車は、ウインカーランプを点滅させてインターチェンジを下りて行った。

 

「やっぱりな」

 

と、大地の主人。サイドガラスにヘルメットをかぶった制服姿の横顔がチラッと見えた。

 

大地