ヤンレストラン
サムイ島に来るたびに物価の値上がりが気になっていた。これはタイ全土のことなのだろう。
さらに気になるのは、ヤシの葉の濃い緑色が薄くなっている。元気がないように感じる。よく見ると部分的に枯れている。害虫による被害らしくみすぼらしくなったヤシの木は、先端が切り取られてしまっている。鉛筆が何本か立っているみたいで残念だ。
サムイ島のふ頭から船に乗り、パンガン島を経由してタオ島に向かった。太陽が雲の谷間から顔を出すと、光に照らされ緑に囲まれたタオ島が現れた。
ふ頭に上陸すると、タクシー、宿の手看板を持った大勢の島の住民が押しかけていた。この感じ!目的地に到着すると客引きに囲まれる歓迎ムードがいかにもウエルカムでいいではないか。十数年ぶりのタオ島上陸だった。
予約していたふ頭近くの宿まで歩く。店先から住民がアタッシュケースを転がすぼくら親子連れに声をかけてくる。
「どこまで行くんだい?」
「バアンスアンタ ホテル」
「真っすぐ行って、すぐ右だよ」
住民の親切?好奇心?が嬉しく感じられる。
宿で旅装を解き、食事に出る。そして yang restaurant の看板が目に止まった。
記憶が蘇った。以前、スキューバダイビングに来たときに日本人のインストラクターに教えてもらった安い、大盛、美味しい店だ。
店構えは、古くさくて一見入りにくい昔のままだった。店内は、薄暗い。木の作り、電気の配線むき出し、植物を編んだ天井で当時から変わらない様子に嬉しくなった。
料理を注文をしながら、確信したくて店員にきいてみた。
「何年、ここで店をやっているんだい?」
「20年」
(やっぱり、そうか!)
では、料理は?豚肉の生姜炒め、レモンミントスムージーと安い、うまい、大盛の三拍子まで変わらなかった。
食事を終えて、夕日に誘われてビーチを歩く。ビーチでたわむれる旅行者たちの笑顔がどことなく輝いているように感じられた。