奄美 金作原原生林への冒険
日本にもまだ知らない驚かされる場所が残っている。奄美は、旅の新鮮さを味わわせてくれる。
金作原(きんさくばる)原生林に入るために、4輪駆動車が必要だった。レンタカーで借りたパジェロミニは、27万km以上乗りつくされている代物だ。海風で車体にはサビがある。
操作を間違える人がいるのだろう「4WD(4輪駆動)のシフトレバーは動かさないで下さい」と、手書きの紙切れが貼ってある。2WDに変えられないから、アクセルを踏んでもたいして加速した気がしない。
助手席のチャイルドシートに娘、後部席に妻を乗せた。
外付けナビゲーターを頼りに原生林の登り口にたどり着く。確かに入口は、ここだけど本当にこんな登山道みたいなとこでいいのか?不安になる。念のために登り口横の車修理をやっているような工場で尋ねた。
「ここが金作原原生林の入り口でいいのでしょうか?」
「そうだけど。無理だよ。この前の台風で土砂崩れになっている。ここでなくてハブセンターの脇道から入っていけるから。ただ道がどうなっているか分からないから、ハブセンターで聞くといい」
と、つなぎの作業服を着た男性の方が親切に教えてくれた。
そしてハブセンターに向かい情報取集をする。
「この前、小学生が迷って捜索されたから気をつけてねっ」
と、ハブセンターの女性に忠告された。
パジェロミニで進むと舗装された道路がいつの間にやら細くなり、ただ機械で固めた土の道に様変わりしていた。
気づくと軽自動車1台分の車幅しかない。前から車が来たらどちらかが、バックするしかないではないか!踏み固められた林道はデコボコ道で岩肌が所々に見える。進む速度も徒歩なみになった。時間が進むのが遅く感じられる。
携帯電話も圏外だろうな。自分たちの軌跡がナビゲーションシステムに表示されるのが唯一の救いだった。
ハンドルを取られないよう気をつけなければならない。悪路を4WDで走行するのが好きならまだしも、初めての4WDの運転なので、この状況に少し参りだしていた。こんなことならツアーで参加するんだったと後悔する。昨日まで青い海でたわむれていた楽しい思い出もどこかに飛んでいった。果たして無事に着けるのかと不安にさせられる。奄美を楽しむためにやって来たのにな。
幸い助手席の娘はよく寝ていてくれる。
登山でしか見られないような木製の道しるべを頼りに前進するしかなかった。ハブセンターの女性に教えてもらった道しるべどおりに進むと、2、3台車を止められる広場のある金作原原生林前にようやく到着。
ジャングルは、古代からの姿で保存されていた。映画 ゴジラの撮影に使われた、そのものの自然だった。よくこんな険しいとこに撮影機材を運んだものだと感心させられる。突然の足音で野鳥が驚いてどこかに飛んでいきそうな雰囲気である。
原生林の散策は入り口付近で止めた。雨も降りそうだったから。
車まで戻ると、あんなにポンコツだと思ったパジェロミニが愛おしいと言うか、輝いて目に飛び込んできた。エンジンがまともに加速しない、ガソリンばっかりくう燃費の悪い、廃車寸前の車だと邪険にしてたのに。記念写真もパジェロミニの横に並んで妻に撮ってもらった(ピンボケだったが)。席に座るとハンドルをいい子、いい子してなでていた。出来の悪い息子に突然、親孝行してもらったような気持ちとでも言えば、いいのか。
まさにパジェロミニは、金作原原生林のために作られたような車なのだ。
さて、また、帰りの悪路が待っている。