さらば アウディA4
「海に行こうぜ!」
と、いつものように突然、友人Sがやって来た。
今日は、午後2時から仕事だった。わるいと思いながら断った。
(金が必要になったので、新車を一年で売らなければならないんだ)
と、言っていた友人の言葉を思い出した。
急いで追いかけると、やっぱり、アウディA4の真っ白いボディーがこっちを向いていた。
2時の仕事にまに合う約束で高速に乗った。わずか2,3時間のショート・トリップだ。さすが高級車は100キロのスピードを出しても、速度を感じさせない平然とした乗り心地だ(60キロくらいの感覚)。
まずは、羽生サービスエリアでゴーゴーカレーをオーダー。友人Sは、大盛りのメジャーを注文。もちろん、さようならの儀式のためにぼくがおごる。
腹がいっぱいで身動きできない(笑)。
もう帰らなくては。時間いっぱいだ。折り返しは、高速を降りて下道で帰宅する。
キズ一つない純白のアウディA4の後ろ姿が見えなくなるまで、ぼくは見送った。
ぼくにも一人の娘がいる。あの子もやがて大きくなり、学校に入学やなんやらでお金が必要になるだろう。その時にぼくも何か、一番大切なものを売らなけばならなくなるのだろうか。まっ、売るものがあればの話だが。