バブルの混とん その3
バイトは求人雑誌ですぐ見つかった。建築、道路工事の警備員だ。これでひとまずお金を作ろうと思った。
秋の出発まであと3か月しかない。いくら必要か?
1日の滞在費3000円 x 60日 = 18万円
ユーレールユースパス(2か月有効の鉄道定期券) 5万5千円
ちなみに飛行機のチケットは、スポーツ新聞の数行広告にある
「ヨーロッパ15万、60日オープン、〇×ワールド 03-xxxx」
に問い合わせすると、乗り換え便のパキスタン航空だと教えてくれた。
これに合わせて予備費 10万円
合計 50万円
これでどうにかなるとふんだ。
(時には、夜行列車で移動で節約、宿はできるだけ安くドミトリー、ユースホステル利用、食事はパン、チーズ、ハムですませて旅費をうかせる)
バイトの日当は1日8千円。昼食は弁当を持参し、週に一回の休みでがむしゃらに働いた。真夏の日中、道路工事の暑さもドライバーからの苦情も耐え忍んだ。外国に行く目標ができると我慢ができた。
お金を稼いでいたが、何が欲しいとか、買いたいという思いはない。この好景気でどこのだれが豪邸を建てようが、高級車を乗り回していようが一切、興味はわかなかった。
自分の欲望はただ一つ。ヨーロッパを自由気ままにさまよいたい。これだけだ。(もちろん高級ホテルには泊まらないし、高級ブランドも買わない)
未知のものに触れ、肌で味わい、今までにない体験をとうして新鮮な感動に出会いたい。お金で買える物質的なものでなく、精神的なものをぼくの心は求めていた。
初めてパスポートを取得、二十歳そこそこの白黒証明写真が透明のシール越しに貼り付けられた。ヨーロッパの鉄道の定期券、ユーレールユースパスを旅行代理店で購入。手持ちの現金を旅行小切手、いわゆるトラベラーズチェック(TC)に替えた。
そしていよいよ出国の日を向えたのである。
こうしてぼくの2か月間のヨーロッパ旅行が始まった。