バブルの混とん その1

1988年、日本中はバブルという今までにない好景気の渦中にあった。

どの業界も忙しいく、仕事は次から次へときた。仕事の求人も追いつかない。就職情報誌は、正社員、未経験者募集で300ページをゆうに超える分厚さだ。郵便局の定期預金も10年預ければ、2倍になった。(例えば、100万円預けると10年後は200万円になる)。金が金を呼びよせる。今では夢のようだ。

そんな波に乗れずにいる自分がいた。無職で実家に居すわり、何にも関心がもてず、ひきこもっていた。何にもおもしろくない。意欲がない。生きる気力がまったくなかった。

「なんか働け!」
と、母はなんどもぼくに小言をいった。

しかし、ぼくはただの抜け殻だった。

何か月かたち、さすがにこのままではまずいと思ったのか、何かおもしろいことはないのか?と探す気になった。

果たして自分は何がやりたいのか?

なにもせずにただ寝転んでいた自分が、ふと、思いついたのが「旅」だった。
就職していたころ、海外へ出ようとしたが仕事の都合でパスポートの申請をあきらめたことがあった。

そうだ!外国に行ってみよう。

と、単純に思った。学校の社会科では、アメリカ、イギリス、中国と勉強しても、どんな世界なのか?ピンとこない国々。自分はまだ若い。その若いうちに、まだ、見たことのない世界を見てみるのもいいのではないかと、前向きな気持ちになった。